蟲ソムリエの実践

昆虫食ブログです。前ブログ「蟲ソムリエへの道」 http://mushikurotowa.cooklog.net の続き

2-2 味見の方法とスコアリング

味見をして美味しい昆虫かどうか、調べたいときに、最初にその方法を決めておくことが大事です。途中で変えたり、初めにやっていた方法が間違いだとわかった時は、たくさんのデータを捨ててしまうことになります。
 
キノコと同様に、昆虫も非加熱で食べることは危険です。
高温で全体を加熱でき、仕上がりもサクサクの揚げ調理は
簡単においしくできますが、同時に風味も大きく変わってしまいます。食材の風味を保ちつつ、安全な方法として「茹で」を選びました。昆虫の味は全般に塩味がうすいので、塩やポン酢を少量足して
味わうことにしました。
 
次に味の評価です。様々なパラメーターが考えられますが、わたしが昆虫を評価するにあたって重要視していることを評価項目にしました。
 
1,みため  appearance
2,かおり  smell
3,のどごし texture
4,あじわい taste
5,のびしろ possibility
 
昆虫食は見た目がちょっと、という方が多いので、
1,見た目を項目に加えました。2,かおり、3,あじわいに加えて、昆虫は4,のどごしが特徴的なものが多く、その美味しさに影響していたので
味要素は香り、のどごし、味わいの三要素にしました。
そして5,のびしろは昆虫学から見て、開発次第で将来に役立つ可能性を評価しました。
いずれも20点満点で評価し、トータル100点満点としました。
 
これらのパラメーターがいずれも均等に20点ずつであることも、
それをトータルで100点満点にすることも、科学的な態度とはいえないのですが、ランキングをつくる都合上、わかりやすさを重視してこのようにしました。結果としては私のおすすめする昆虫がランキング上位に出てきたので、私のスコアリングとしてはうまく言ったと思います。
 
それではその結果について、昆虫の目ごとにまとめましたので
見ていきましょう。

2-1キノコ図鑑がうらやましい

第一章では、自分が昆虫を食べる前に必要な知識や手順を、
そして他人に食べさせたり、食べさせられたりする際の安全の手引を説明しました。
 
この第二章は私がやってきた昆虫食研究「味見編」「応用編」をなぞることで、昆虫学ベースの昆虫食研究の入り口を体験してもらえればと思います。そしてこの図鑑をよりよいものにするために、
賛成反対をふくめてたくさんの反応があればと思います。

キングコングに昆虫食は出てこない

前ブログでシン・ゴジラ考察の記事がPVを集めました。
 
 
 
レジェンダリーの怪獣映画シリーズ。
パシフィック・リムゴジラ、と観てきましたが
 
今回は王道アメリカン怪獣映画、キングコング
ポスタービジュアルは日本版が最強だと思います。
 
 
\おおおおお!? なんか見た事あるヤツがいるぞ!?/ pic.twitter.com/Gh1p7G43tb

ワーナー ブラザース ジャパン (@warnerjp) 2017年2月7日

 
 
「ヒトが最弱」の島に到達して
ジュラシックパークのテイストで襲われまくる、というスタイルでありながら
恐竜ではなくあくまで「怪獣」として振る舞うクリーチャーたちは素敵。
 
怪獣映画出身ではない監督を迎えたことで
人間ドラマの脚本が優秀ですね。「いてもいなくてもいいヒト」が極力無いのと
怪獣映画にありがちな「怪獣が映える物語を盛り上げるためだけにいるバカ」が
ほとんどいないのが優れていました。
 
さて、この映画では
怪獣映画ではあまり触れられることがない怪獣たちの「食性」が
登場しました。
 
考察するにあたっては、前作2005年キングコングと、初代キングコングあたりを
観ておきたかったところですが、今回はこの映画と
パンフレットから読み取れる部分だけで考察しましょう。

以下ネタバレします。
 
 
しますよネタバレ。
 
 
観ていないヒトはここで引き返したほうがいいと思いますよ。
 

まずは整理してみましょう。
 
今回怪獣の食性がはっきりしているのは以下の関係です。
今回はかわいいフリーイラスト素材集「いらすとや」さんの素材で作りました。
 
1,キングコングが湖?で巨大なタコだかイカを食べた。
2,竹林に住む巨大ザトウムシ(スパイダー?)みたいなのがヒトを食べようとした。
3,翼竜みたいなのが集団でヒトをついばんで食べた
4,スカルクローラートリケラトプスを殺して食べた。
5,先住民族と小型スカルクローラーは互いに殺し殺されの関係にある。
6,大型スカルクローラーキングコングを食べている。
  キングコングはスカルクローラーを殺して食べている。
 
 

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「食べた」という観察事例と
「それを主に食べている」という食性とは
必ずしも一致しない点に注意しておきたいところです。
 
キングコングは巨大なゴリラに似た生き物ですし、映画の中で臼歯が見えましたので
完全肉食とは考えにくいです。肉食をふくむ雑食、と仮定しておきましょう。
 
今回、部外者である調査隊は缶詰のレーションを食べていましたね。
 
もう一つ、興味深い特徴があります。
ここまで異質な巨大怪獣がいながら、植物に目立った変異体がいないことです。
怪獣が植物とが共進化したでのはなく、既存の植物に適応しつつ大きくなった、と考えてみます。
 
この中で植物食と考えられる怪獣は
水棲の巨大バッファロー 巨大ナナフシ(マンティス?)頭骨のみの登場となったトリケラトプス
です。
 
バッファローはおそらく反芻動物で、ヒトを食べなかったことから植物食と思われます。
全個体に立派な角があったことから、上位捕食者の存在が推測できます。ここでは
スカルクロウラーと思われますが、キングコングは愛着のある存在は食べない、というナゾの性質があり、バッファローは食べない描写があります。
トリケラトプスはスカルクローラーの巣で死んでいたので捕食されたのでしょう。
そしてナナフシは樹木に擬態していました。つまり目視にたよった捕食者を回避するための
 
進化だと思われます。野生のゴリラは昆虫食性の強い個体群もあるので、
ナナフシの捕食者がキングコングだったのか、スカルクロウラーだったのか、その両方なのかは
はっきりしません。
 
そして食べ物がいまひとつわからなかった
島の原住民らしき人たち。
何を食っているか、映画の中ではあまり出てこなかったのですが
砦には多くの血痕があり、それらはスカルクローラー避けだったと語られました。
そしてキングコングが守ってくれるようになるまでは樹上生活だったとのことです。
 
砦には血痕があるだけで肉片や死骸が落ちていないことから
反撃して殺したスカルクローラーを食べていたのでしょう。
また、スカルクローラーはほぼ完全な肉食のようです。
 
島全体のバイオマス利用の「効率」という意味では
ヒトがスカルクロウラーを食べ、
逆にスカルクロウラーがヒトを食べる、という相互の被食捕食関係は
限られたバイオマスを呼吸とウンコに消耗してしまうので、
嵐に閉ざされた島ではあまり褒められたことではありません。

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また、
島に似つかわしくない巨大な生物がいる一方で、植物の残存量はさほど多くありません。
そして極端に光合成効率の高そうな植物もみあたらないことを考えると
光合成由来の有機物は他の地域に比べて豊富とはいえなさそうです。
 
怪獣たちは限られた島のバイオマスの利用を効率化、改善することで
余計な消耗、つまり闘争を防いで共存していく道を提案すべきでしょう。
住み分け、食いわけによって島の生態系は持続していくのです。
 

今の島のバイオマス利用の問題点を整理しましょう。
 
1,肉食怪獣多すぎ問題
まずはこれですね。
スカルクローラー 巨大イカ、 キングコング
巨大ザトウムシ、翼竜と、肉食生物多すぎです。ヒトが来ない間は何を食べていたのか。
イカ以外は島の外からバイオマスを持ち込める経路をもっていない様子なので
光合成由来のバイオマスをいかに効率よく利用するかが大事です。
 
2,植物進化少なすぎ問題
巨大生物の腹を満たすだけの、巨大な、もしくは高効率な
植物の様子がありません。怪草 怪樹のような
怪獣と共進化した巨大植物がいてもいいとは思うのですが。
もしくは見た目は普通の植物だけれども
実は特別な進化をしている、という解釈もできるかもしれません。
 
ヒトが樹上生活をしていたこと。キングコングが樹上生活をしそうな
巨大ゴリラ状の体型でありながら、島にキングコングの体重を支えられるような
巨大樹木がないことを考えると、スカルクロウラーが捕食の邪魔だとして
すべて切り倒してしまったのかもしれません。
 
焼き畑のあとのような、植生撹乱のあとの二次遷移の状態であったため、
外の世界と同じような貧弱な植物群があった、と考えても良さそうです。
 
ですがこのままの貧弱な植生では怪獣たちが飢えてしまいます。

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3,地球空洞説からみる大映の足音
 
ナナフシやバンブースパイダーなど
食性にかかわらず、隠蔽擬態をしてヒトが近づくまでじっとしている描写が多くありました。
これはバイオマスが少なく、かつ不安定な島の環境に適応した「休眠」と考えられます。
 
休眠というとクマやスズメバチの女王など
寒くて動かずにじっとしている「冬眠」のイメージがつきやすいですが
ゴキブリの仲間などは、夏の暑すぎるときに成長や発育、性成熟を止めて
休眠する「夏眠」という状態になることが知られています。
 
脊椎動物でも、砂漠に住む生物などは条件の悪い夏に休眠状態になることが
あるそうです。
 
髑髏島の怪獣は、外界からの刺激に対して一瞬で休眠状態を解除し
捕食するような「待ち伏せ捕食」が高度に進化した生物であると考えられます。
 
スカルクローラーも昼間は洞窟に潜んでいる、というのも休眠の一種でしょう。
彼らは胴が短く、消化管もあまり発達していなさそうで
一気に食べ、さっと消化して未消化物はウンコにするか吐き出す、
そして洞窟で休眠する、という生活をしていると考えられます。
 
ナナフシは当然として、竹林に住むザトウムシのようなクモも
バッファローも、イカも? 翼竜なども、でしょう
そのため、個体サイズが異常に大きく、生活史が極めて長い
K戦略型の生物群が、怪獣として進化したのでしょう。
見た目よりもかなり通常の代謝は低い、と考えられます。

更に考察を深めましょう。
 
 
劇中で、あまり説明されなかったことがあります。
学説として示された「地球空洞説」
 
助手の地質学者が提唱したもので、
爆弾による衝撃波を観測することで、実証される形となったのですが
スカルアイランドの地下は空洞なのだそうです。
 
そして地下からスカルクロウラーが出てくると。

おや。
 
 
おやおや
 
 
 
もう一度整理しましょう。
 
スカルアイランドの怪獣は「待ち伏せ捕食」に特化し
獲物が近づくまでは動かない休眠状態によって代謝を抑制することで
生殖サイクルが極めて長い、そして環境に応じてフレキシブルな固有生物群であると示されました。
 
そして彼らはいずれも陸上呼吸・肺呼吸の生き物です。
 
肺や気管系があるということは
その中は空洞であるということです。
 
ここで大胆な仮説が浮かび上がります。
 
「スカルアイランド自体が巨大な肺呼吸生物であること」です。

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爆弾投下やヘリの墜落でも休眠状態が解除しない、
キングコングやスカルクロウラーよりも遥かに巨大でライフサイクルの長い
巨大なウミガメのような生物と推測できます。
 
この仮説により、一見して島のバイオマスが不足しているようにみえることにも
説明がつきます。島が無機物の岩石ではなく、有機物の甲羅でできていたのです。
 
スカルクロウラーや島の植物は、巨大カメの着生・寄生生物であったと考えることができます。
スカルクロウラーが穿孔性の寄生生物で、いつもは亀の甲羅に穴を開けて住処としているのです。
 
島の巨大生物を支えるバイオマス
日光ではなく巨大カメ由来の有機物から供給されていたのでしょう。
 
 
すると、河川や湖のように見えていた部分は海に浸かった甲羅の隙間であった
ことになりますので、淡水ではなく海水だったのでしょう。
海水にしか生息しない頭足類が、
山間地にあるような湖でキングコングと戦っていたことにも説明がつきます。
 
つまり。この映画は
すべてはカメフジツボの世界だったと。
お釈迦様の手の上での出来事だったんですね。
 
インドの宇宙観では世界は亀の上だ、とどこかの教科書に書いてあったと思います。
それはスカルアイランドの伝説がモチーフになっていたのではないでしょうか。

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ん? 誤った古代インドの宇宙観?
 
調べていたら、どうやら
 
この図は誤解だそうです。むむむ
このような世界の構造を示すインドの神話はない、
どこかで作られた創作だということです。
 
 
知らなかった。
 
この文献の中で
 
亀が登場するインドの神話として
 
 
 
乳海攪拌という天地創造神話が紹介されています。
 
 
こちらから引用します。
 
 
亀:「乳海攪拌」という神話がある。ひょんなことから不老不死の能力を失った
 
神々は悪魔たちに襲撃され窮地に陥るが、事態を打開するために悪魔へ取引を持ち
 
かけた。すなわち両者が協力して不老不死の薬を作り、山分けしようというのだ。
 
 大海に巨大な山を攪拌棒として突っ込み、蛇を巻き付けて両側から引っ張ると、
 
海はかき混ぜられて乳のように白く濁り、中から様々なものが生まれた。このとき
 
山が海に沈みかけたが、ある神が亀に変身して下から支えることで事なきを得たと
 
いう

なんとこれは。
 
思いがけずこんな話にたどりつくとは。
 
スカルアイランドの誕生を示した神話ではないでしょうか。
 
ヘビはスカルクロウラー、引っ張ったのは手を持つキングコング
 
そして沈みかけた山を支えたのが亀。なんという神話と映画の一致!
 
寄生性、着生性、半寄生性の生物ばかりだとすると
肉食性の強い怪獣がえらく多く見られたのも納得です。
 
また、亀の甲羅上の植物によく似た植物も
おそらくカメの有機物を利用できる微生物や菌と共生関係をもつことで
鯨骨生物群集のような進化をしていたと思われます。
 
これにより、反芻動物である巨大バッファロートリケラトプスナナフシといった
巨大植物食性動物たちのエサが常に確保できます。
 
すると、
これら怪獣たちが休眠をしつつ代謝を節約していた
という仮定すら必要ないですね。
 
カメが十分に大きく
その代謝によって甲羅上に十分な有機物が供給されるのであれば
スカルクローラーが甲羅上生物群集に有機物を供給することで
持続可能な形で豊かに繁栄できます。
 
島の地底に続く穴から可燃性のガスが出てきていたのですが、
それも有機物の嫌気分解ガスか亀のオナラだと思われます。
 
「常に嵐に覆われている」というのもカメの代謝によって
周囲の海水温が常に高温になっているせいかもしれません。
 

 
整理しましょう。
 
スカルアイランドとは
数百年か数千年に一度、休眠から覚めて
大量のバイオマスを捕食する超巨大なカメの
休眠中の代謝産物によってすべての有機物が賄われている甲羅上の生物群集である。
 
甲羅由来の有機物と光合成によって
植物系生物群集であるバッファローナナフシトリケラトプスが養われ
 
甲羅に穿孔して直接養分を得る寄生生物、スカルクローラーが生態系を支えます。
植物の残存量はスカルクローラーが寄生性から肉食性へと食性転換することで
もしくはバッファローをたべないキングコングがスカルクローラーを捕食することによって
バランスが保たれていると考えられます。
 
この映画の中で
次作でのゴジララドンキングギドラモスラの存在が示されました。
東宝怪獣の権利を取得しているのですが
 
レジェンダリーは今すぐ大映と交渉してガメラの利用権を取得しろと言っておきます。
そしてキングコング、そしてゴジラ、頑張って体高10kmほどには育ってくれと。
 
 
パシフィック・リムも絡ませるならば、身長が全く足りないので
いますぐマクロスの10倍ぐらいのロボットを建造せよと。
 
なにしろ爆弾投下にも、キングコング大暴れに全く動じなかったカメです。
今の怪獣たちに勝てる見込みがありません。休眠を解除して
捕食対象だと見てもらえるかどうか、すらも微妙です。
 
また、寄生生物のバイオマスは一般に、寄主より大幅に少ないことが知られています。
寄主がまずは大きく育ってくれないことには、寄生生物は十分に栄養を奪えません。
 
そのため、コングがガメラ並に大きくなるには、
スカルクローラー以外の経路でバイオマスを得る仕組みを積極的に利用する必要があるでしょう。
コング成長プロジェクトです。
 
原住民とコングは、外からの栄養供給源であるタコを集められるよう
河川にタコツボを配置し
外部から餌となるヒトが入ってくるような噂を流し
(そもそも調査のきっかけとなった噂を流したのは原住民の戦略だった可能性もあります。)
土地を切り開き、
農地を開拓してキングコングのフンやスカルクローラーの死体を
堆肥として土を肥やし牧草やナナフシのエサとなる葉を栽培して
砦の技術をもってそれらが横取りされないように囲う。
 
農業の始まりです。
 
これによりスカルアイランドは豊かな農地となり
植物食性の動物を養殖することで高タンパクな成分を摂取でき
 
うまくいけば
ガメラに匹敵するサイズまでキングコング
大きくなってくれるのではないでしょうか。
 
次作の時代設定はいつになるかわかりませんが
キングコングは成長期」であることに期待しつつ
ガメラvsキングコングという、新しい対戦を待ち望みましょう。
 
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1-5他人から昆虫を提供されること

ここまで、自分で昆虫を食べること、他人に昆虫を食べさせることについて
説明してきました。次は「他人から昆虫を食べさせられること」です。
 
イベントに参加して昆虫を食べたり
食用として売られている昆虫食品を購入する際にはこの心がまえが必要です。
つまり「昆虫を勧めてくるヒトは信頼できるのか」という点です。
 
昆虫食は法制度が全く整備されていないので
今は完全に自己責任、好き放題という状態です。
また、ゲテモノとしての昆虫食は注目を集めやすいのと
昆虫は身近にあるので誰でも挑戦できることから
危ういイベントもよくみかけます。
 
研究会でもその危険性について注意喚起をするのですが
それがかえってそのイベントや主催者に注目が集まってしまう
ことから、注意が効果を感じないこともありました。
 
そのため、食べようとする人それぞれが、食べ始めからきちんと知識をもち、
信頼できない昆虫食提供者から距離を置くための、自衛の方法を
ここで説明しておきます。
 
具体的には
これまでに説明したことを、隠さずにきちんと説明してくれる提供者を選びましょう、ということです。
 
1,昆虫には食物アレルギーの危険があり、ゼロにはできないことを説明していること
2,加熱による衛生管理の意味を理解し、実施していること
3,その他参加者が不安に思っていることや知りたいことを曖昧にせずに説明できること
4,参加者の食べない判断を尊重してくれること
 
逆にすると、信頼できない提供者の説明になります。
 
1,今まで何もなかったから大丈夫と強要し、アレルギーなどの食品リスクについて説明をしないこと
2,加熱や衛生管理がきちんとしておらず、名前を調べずに食べる、生食するなど危険な食べ方をしていること
3,参加者が不安に真摯に応対せずノリや覚悟を強要すること
4,参加者が食べない判断を尊重しないこと
 
このような悪い提供者から受け取った昆虫を食べたとしても、
多くの場合は何も起きないと思います。しかしごくまれに食品事故が起こったとしても、
彼らは自らの提供者としての責任を自覚していませんので、真摯な対応は望めません。
一番痛い思いをするのは食べたあなた自身の体です。
 
昆虫食を長く楽しむには、無事故に越したことはありません。
いくら美味しくても、食あたりを経験すると、その食材から遠ざかってしまうものです。
あなたの健康を害することが一度でもないよう、予防原則で楽しむことをお勧めします。
 
また、昆虫を食べた後、体調に異変があった場合は、
どの種類の昆虫をどのくらい食べたか、申告をして
できればその昆虫そのものを持参して
すぐに医療機関にかかることをお勧めします。
事態が収まったら、主催者にもその経緯を連絡するとよいでしょう。

1-4昆虫を人に食べさせること

ここまでは昆虫を自分で食べることについて説明をしてきました。
私は生食をすることはしませんが、昆虫を生で食べたい、というヒトもいます。
感染症のリスクがありますが、そこまで強くは止めません。
 
ただ、他人に生食を勧めることや、間違った知識を教えて
危険な食べ方を誘導してしまう、
生食をしたほうが昆虫食に対して覚悟がある、といった煽る行為は
断固として批判します。
 
それは食品は特に他人に強い影響を与えるものだからです。
最も心配することが、食中毒と食物アレルギーです。
 
食べた人の体を大きく危険に晒しますし、
最悪死の危険すらあります。そのため食品を食べる自由はあっても
食品を他人に食べさせる行為には、責任と義務がともないます。
それを民法では「善良な管理者の注意義務」といいます。
 
業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと。 注意義務を怠り、履行遅滞不完全履行履行不能などに至る場合は民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となる。<デジタル大辞泉より引用>
 
昆虫を提供する場合、有償無償にかかわらず、「昆虫を食べる行為」を任されている、と解釈します。すると、自ら食中毒になりたい人はいませんし、昆虫に対する安全衛生の知識は常識といえるほど普及していませんから、適切な知識を提供し、食中毒を起こさずに安全に食べるまでを期待されていると考えられます。
 
なので、「ハードルが上がる」とか「ノリが悪くなる」と言った理由で
説明せずに、あるいは昆虫が入っていることを知らせずに罰ゲームのように食べさせるのは
その後、食中毒や食物アレルギーが起こったときに、民法上の賠償責任を問われても仕方ありません。
 
そもそも、昆虫食は罰ゲームなどではなく、文化的な美味しい食品なので
ゲテモノとみなした食べ方は昆虫食文化に対して尊敬がないと思いますので個人的には嫌いです。
 
知らせておきたい食中毒の知識
 
食中毒への対処法は採集昆虫食、養殖昆虫食でガイドしました。
昆虫を他人に食べさせるときは、調理済みの昆虫を提供することもあります。
その場合は加熱調理だけでなく、調理後にも適切な管理をする必要があります。
 
具体的には加熱後移動する場合は、低温で貯蔵し、速やかに食べることです。
後で加熱すればいいと考えてはいけません。
一度繁殖した細菌や菌類が毒素を産生し、その後加熱したとしても
その毒性が残る場合があるからです。ヒスタミン中毒などがその例です。
 
私が見る限りですが、昆虫は死ぬとみるみるニオイや見た目がかわっていき
生のエビと同じぐらいの速さで変質しているように見えます。
時間経過や温度によって、どの程度危険なのか、細菌の数などを検査したいところですがいまのところデータがありません。予防に努めましょう。
 
それでも食物アレルギーはゼロにならない
 
今まで説明した昆虫の衛生管理は、昆虫そのものは安全であるという前提でした。
しかし、昆虫が本来持つタンパク質などの成分に対して、食物アレルギーをもつひとが
一定割合でいます。食物アレルギーの発症はアレルギー物質への経験によって
個人個人で異なるので、一概にどうすれば発症する、どうすれば発症しない、とはいえません。
 
大学祭において、昆虫食経験のある学生がカイコの入ったクッキーを食べ、重い食物アレルギーを起こした事例もありました。
当時本人の体調が悪かったことも関係していたかもしれませんが、
昆虫の食物アレルギーの発症については、食べる本人にきちんと説明をし、判断を任せることしかできません。
研究会の活動では現在は、アンケートを兼ねた同意書を作成し、食べるすべての人に説明と納得をしてから昆虫食を楽しんでもらうようにしています。今後はパッチテストなどの簡易検査を追加で導入できれば良いと考えています。
 
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1-3 養殖昆虫食のガイドライン

今まで世界で行われているほとんどの昆虫食は採集昆虫食です。
日本では稲作の副産物としてのイナゴや、クロスズメバチの「飼い巣」は種苗を生産しないので半養殖といえます。養蚕の副産物としてのカイコの蛹などは完全養殖ですが、生糸が売れないかぎり食用として出回ることはほとんどありません。つまり生糸の生産量よりも多く食べたいと思っても不可能なのです。
 
そこで今後は、専用に食用として完全養殖された昆虫が開発されるでしょう。
私もそれに挑戦しているところです。
 
昆虫研究者の間では、多くの昆虫が研究用に養殖され、実験に使われています。
その技術は論文や書籍によって基本的に公開されていますが、
それでも月に数百から数千個体が限界です。
 
食用、飼料用の研究をするとなると、そして更に販売するとなると
キロ単位、数十キロ単位でたくさんの昆虫が必要で、
もっと効率化した養殖方法を検討する必要があります。
 
養殖によって得られた昆虫は、1頭1頭名前を確かめる必要もなく、
野山を駆け回って捕まえる手間もかかりません。
また、野外にいる昆虫を食べる動物達につまみ食いされることがないので
安定してたくさん手に入ります。
 
食品として法制度などが整備されたら、ゆくゆくは採集昆虫よりもいくらか安全なものになるでしょうが、現在手に入る養殖昆虫は、その経緯によっては別のリスクが高い場合があります。
基本的な対処法は採集昆虫と同じです。
 
ペットショップで売られている養殖昆虫
 
爬虫類や両生類、小型の哺乳類、肉食の節足動物など、エキゾチックアニマル
と呼ばれるペットの中には昆虫を好んで食べるものがたくさんいます。
そのため、
それらの動物を扱うペットショップでは生き餌として養殖昆虫を売っています。
代表的なものはコオロギやゴキブリ、カイコやミールワームの幼虫などです。
 
研究会でもそれらの生き餌用昆虫を購入し、イベントで食べることが
ありますし、メンバーが自宅で養殖していることもあります。
 
ここで注意したいのが、サルモネラ菌のリスクです。
両生類爬虫類、鳥類はサルモネラ菌を体内にとりいれても病気になることはなく、
保菌者(キャリア)として健康に過ごしています。
 
ペットショップの動物では、
野外や個人飼育の動物に比べて、保菌率が特に高いことが調査でわかっています。
様々な由来の動物を高い密度で、同じ器具を使って扱うためだと考えられます。
 
サルモネラ菌は少量が付着しただけでも感染しますので、
ペットショップで売られている昆虫にも付着し、
それがヒトに感染する危険性があります。
 
2015年ではアメリカで、メキシコ産の生のキュウリに付着したサルモネラ菌
感染し、3名の死者が出ました。
 
もちろんペットには発症しませんので、
ペットショップの生き餌としては全く問題ありません。
それを食用に転用する際に、きちんと管理をしてほしいのです。
 
具体的には採集昆虫食のガイドラインにあったように、必ず加熱する。
加熱前の昆虫に触れた器具を使いまわさないことを徹底しましょう。
 
昆虫はカイコとミツバチ以外は家畜ではないので
日本の法律では養殖にあたっての安全基準はまだ作られていません。
カイコでは養蚕振興法、ミツバチは養蜂振興法に
 
 
ミツバチは機能利用、蚕は糸の利用であるので
その見た目や動きによって「健全かどうか」がわかります。
 
一方で食用にする場合は、死体になってしまえば健康かどうかはわからず
微生物の繁殖や酸化劣化などの影響があるかどうか、食べないことには分かりません。
 
そのため、食品加工プロセスそのものにきちんと安全性を確かめる仕組みが必要で
他の食品でもやられていることを踏襲する必要があると思います。
 
そのため、
研究会では食用の養殖昆虫にふさわしい安全基準についても
他の家畜を参考に考え、提案しています。
 
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1-2 採集昆虫食のガイドライン

昆虫食にチャレンジする際の基本は採集昆虫食です。狩猟肉をフランス語でジビエということから、研究会では採集昆虫食を「プチジビエ」と呼んでいます。
売られている食用の昆虫を買って食べる方が気軽ですが、買った昆虫も元々は別の誰かが採集や養殖したものです。そのため、先に採集から食べるまでの流れを知っておきましょう。
 
採集をしよう
まずは昆虫を捕まえるところからです。
昆虫図鑑にも採集についての記述がありますが、
基本は同じです。動きの遅い昆虫は手で捕まえられます。しっかり植物に掴まっているイモムシは葉や枝ごと採りましょう。飼育の予定がなく、半日以内に食べる予定であればジップロックやビニール袋に、飼育用や長時間運ぶ場合は虫かごや洗濯ネットなどの通気性のいい容器に入れましょう。飛んで逃げる昆虫は捕虫網を、衝撃を感じると落ちてくる昆虫はビーティングネット、捕まえる昆虫の特徴によってはトラップを使うのもよいでしょう。灯りに集まる昆虫にはライトトラップ。特定の種を集めたい場合にはフェロモントラップを使うこともできます。トラップの場合、捕まえてから時間が経つと死んでしまうことがあるので、原則1にあるように、死んだ昆虫は取り除いて食べないようにしましょう。
 
捕るときに注意が必要な昆虫
針をもつハチやケムシを捕まえる時は素手でさわらないようにしましょう。特にハチは近くに巣がある場合、集団で攻撃する性質があるので1頭だけに気を取られないようにしましょう。
ケムシの場合、毒のない種類の方が多いのですが、知らない昆虫を見た目で判断することは難しいのでケムシが掴んでいる枝や葉ごと採集した後で図鑑で名前を調べましょう。繭や抜け殻にも毒針毛がついていることがあります。カミキリムシやキリギリスなど、強いアゴをもつ昆虫は、捕まえると噛んでくることがあります。柔らかい網に入れておくと噛み破って脱走することもあります。つかむ時は背中側から胸部をしっかりとつかみ、丈夫な容器に入れましょう。
何頭も同じ容器に入れると、互いに傷つけてしまうことがあるので、小さい容器に1頭ずつ入れるとより安全です。
 
加熱をしっかりと
 
昔はバラエティ番組の罰ゲームで、最近はネット動画で昆虫を生食している人もいますが、大変危険な行為ですので絶対に真似しないようにしましょう。詳しくは第三章で説明しますが、どの昆虫も加熱することで、より美味しく、安全に食べることができます。
手軽な方法は生きた昆虫をそのまま揚げたり、茹でたりすることですが、動いて加熱調理が難しい場合は、容器ごと冷蔵庫に入れておくと動きが遅くなり、誰でも簡単に扱えます。加熱ぶよる熱に弱い毒成分を無害化できる利点もあります。しかし、加熱も万能ではありません。熱に強い毒をもつ昆虫もいますので、加熱を過信せず、原則3の毒のある昆虫、原則4の毒がまざったかもしれない昆虫は加熱したとしても食べないようにしましょう。
 
採集用具と調理用具の切り替えをはっきりと
 
昆虫には、食中毒の原因となる微生物やウイルスが含まれていることがあります。その種類や特徴について詳しくは4章で説明しますが、食べる昆虫を加熱したからといって安心してはいけません。加熱前の昆虫に触れた採集用具を、加熱済みの昆虫を扱う調理用具に使いまわしたり、使いまわさなくても用具同士が触れてしまうだけでも、微生物が付着して食中毒につながることがあります。これではせっかく昆虫を加熱しても生食するのと同じ危険にさらされます。
そのため、未加熱の昆虫を扱う器具と、加熱後の昆虫を扱う器具を完全に分けておきましょう。具体的には生の昆虫を扱う器具はピンセットと紙皿、加熱後の昆虫を扱う器具はトングや箸、陶器の皿にします。野外のイベントでは、未加熱の昆虫のを扱った器具は捨てるかしまう、印をつけるなどして事前にルールを決めて参加者に周知しておきましょう。やむを得ず同じ器具を使う場合は、洗剤でよく洗い、乾燥させてから使いましょう。生の昆虫を素手で触った後も同じくよく石鹸で洗うとよいです。素手で昆虫に触らずに採集するのも1つのよい方法です。
 
場所選び
 
原則4にあるように、農薬などの毒の混入を避けることが、普通の昆虫採集と異なる点です。農地で使われるのはもちろん、非農地であっても使われていることがあるので、周囲に異変がないかよく見ておきましょう。また、昆虫採集全般に言えることですが、私有地の場合はその土地権利者の許可を、公園であれば事前に昆虫採集ができるかどうか確認しておくとよりよいです。無農薬の農地が最も食用の昆虫採集に適しており、作物に着く虫を採集すると農家の方も喜んでくれます。しかし無断で侵入すると作物泥棒と間違われかねません。いい採集場所を確保するのも採集昆虫食の大事な要素です。
 
今までにいくつかのガイドラインを書きました。参考にしてください。